試薬の危険性情報

NaH(水素化ナトリウム)の取り扱い・事故・処理

 

有機化学を学ぶ人です。
ブログの移行に伴い、こちらに再投稿していくことにしました。
前のブログの内容を少し編集しつつ再投稿したりもします。
さて先日気になったことがありました。
NaHを洗浄して用いる反応のプロシージャーって結構簡単にだけ書かれていて、危険危険騒がれてるのってなんか怖くない???
事故例とか、安全に洗浄する方法とか記載している場所内のかなあ。
ということで、今回はNaHの安全性についてまとめたいと思います。
まず、敵を知るならば製法を知れ!
ということで、NaH水素化ナトリウムの製法です。
NaHの製法
この反応を鉱油中で行い、鉱油によって安定化されたNaHが販売されているというわけです。
どうりで安価に手に入るわけですね!

しかしどうでしょう、これは反応の進行度が99.99%だったとしても0.01%のNaは取り除けないのではないでしょうか。

水に触れた際に自然発火する可能性があるとSDSには記載がありますが、実際の発火(引火ではありません)要因は含まれる微量のNaにあるのではないかと考えております。
Naが水と触れた際の発火機構は最近明らかとなりました。

(サイトはこちら

いずれにしてもどちらも水とは激しく反応するため禁水であることはわかりますね。

NaHの洗浄方法

反応・精製の際に鉱油が悪さをしてしまう場合に、洗浄して露呈させたNaHを用いることがあります。
その洗浄操作を誤ると大事故に繋がりかねません(実際筆者も別の学生のヒヤリハットを見ました)。
ではしっかりとしたprocedureを学んだ方がよいですね。
以下にわりと詳しい記載のあったものをご紹介します。

The NaH comes as a dispersion in oil. It looks like a grey powder. Be sure not to expose it to air for any significant amount of time. NaH is usually washed with hexane to remove the oil before it is used. Here is a wash procedure that I used when I was doing a reaction that required 2 g of NaH (it was also a 60% dispersion in oil).

A 100 mL pear shaped flask, equipped with a stir bar was flame dried and cooled under nitrogen. The appropriate amount of NaH was weighed into the flask. The NaH was washed 4 x 10 mL with anhydrous hexane. To do the washing, I added the hexane by syringe and then stirred for a few minutes under Nitrogen. I then turned of the stir bar and let the NaH settle. I then removed most of the hexane with a syringe and repeated the process. After the last wash I removed the remaining hexane by placing on a high vacuum pump, but this might not be necessary.

引用元:http://www2.ups.edu/faculty/hanson/c251lab.00/ibuprofen.htm

気をつけるべきは非酸素雰囲気下で取り扱い、水と触れさせないこと!
ですね。
発火・引火機構を考えるとそのようなことが想定されます。
またNaHは分解点が高温(800 ℃)ですので、触媒的に促進するようなものを入れなければ危険に繋がることは少ないと思います。
そのためTHFでも洗浄はできるようですが、酸化防止剤のBHTやら過酸化物形成の可能性やら水の含有可能性を考えるとヘキサンかペンタンでの洗浄が好ましいのではないでしょうか。

NaHの事故例

安全な方だけを見ていてもかえって不安になってしまうのは筆者がひねくれ者だからでしょうか?
ではということで事故例をご紹介したいと思います。
(他にもあるぞ!って方は情報共有のためコメント頂けますと幸いです)

事故例①

この災害は、医薬品の製造工場で、第2種有機溶剤であるトルエンから医薬品中間体を製造する工程で発生したものである。
この工程は、[1]Na塩化、[2]縮合反応、[3]水洗、[4]トルエン溜去の4つの作業で構成され、作業者Aは、同僚と2人でこの4つの作業を担当しているが、そのうち[1]と[4]をAが担当しており、災害は[1]で発生した。
災害発生当日、Aは、始業前の体操および朝礼を終えたのち[1]の作業に取りかかった。まず、無水トルエンの入ったナトリウム化反応槽に水素化ナトリウム(NaH)を投入するため、ドラム缶からNaHの袋を取り出して計量を行い、反応槽の攪拌を開始するとともに窒素の注入と昇温を開始した。その後、Aは、反応槽の投入口を全開にし、NaHの袋を抱えながら反応槽の中にNaHの投入を始めた。
投入作業を始めて30分ほどで2袋目の投入を終えたが、Aは、作業場が暑いので作業服の上着を脱ぎ、Tシャツ姿となって3袋目の投入を始めたところ、ナトリウム化反応槽の投入口付近で火災が生じ、火傷を負った。その後、Aは、シャワーで火傷部分を冷やし病院に移送されてが、II度の火傷と診断された。
(一部引用)
http://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen_pg/SAI_DET.aspx?joho_no=101079
(こちらの事故に対してと思われる注意喚起)
http://www.khk-syoubou.or.jp/pdf/accident_case/jiko_daisannrui.pdf

事故例②

反応に用いるため、水素化ナトリウムをステンレス匙で薬包紙の上に量りとっていたところ、2~3杯目(0.3 g程度)に達したところで発火し、薬包紙とともに燃え始めた。そこで、すぐに薬包紙ごと秤から出し、すぐ隣のゴムマット上に置いた。そのまま、薬包紙が燃え尽きるのを待ち(30秒程度)、火が消えたことを確認した後、アセトンや水で塗らした布巾で、燃え残りを除去するとともに試薬を失活させ、現場を清掃した。ゴムマットには、薬包紙が燃えていた部分に1 cm程度の穴が開いた。
(引用元:東京大学の安全講義資料)
http://www.chem.s.u-tokyo.ac.jp/users/safety/SafetySeminar_2017_Jp.pdf

また、事故ではありませんが、かの有名なブログ「たゆたえども沈まず」にトリフルオロエタノールとNaHを混ぜてNaOCH2CF3を調製しようとした際に発火したとのお話がありました。
http://orgchemical.seesaa.net/article/167756519.html
引火性の高い、揮発性の高いアルコールの場合は気をつけなければなりませんね。

消火方法

では火災の起こった場合にはどのような消火が好ましいのでしょうか。

以下に消火方法について言及しているサイトを見つけましたのでご紹介します。
また試薬の廃棄に関しては先の東京大学に資料に加えて筑波大学がPDFを公開しておりました。
ページはこちら

こういった試薬の安全性や取り扱い方に関しては各々が事前に調査してから実験を行うものですが、1つの試薬について多くを取りまとめるサイトというのが少ないのが現状です。
そういったものについても学び、まとめていけたらと考えている所存です。
(事故例に関しましては、特定されるような情報を載せないのであればという条件付きでも構いません。直接学ぶにご連絡頂ければそのように対処させて頂きます。)
みなさまもご協力頂けましたら幸いです。

カテゴリー:試薬の危険性情報, 学ぶの学び

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