学ぶの論文紹介

GoodmanのNMRシフト計算を用いた立体化学予測①

Assigning the Stereochemistry of Pairs of Diastereoisomers Using GIAO NMR Shift Calculation
Steven G. Smith and Jonathan M. Goodman*

DOI: 10.1021/jo900408d (2009年報告)

こちらの論文を読みます。

CP3法の背景

まず元となるのが、Gauge-Independent Atomic Orbital (GIAO) 法と呼ばれるNMRケミカルシフトの予測計算方法です。
他にも様々な方法があったり、Spin-Spinカップリングを補正する方法があったりなどこれだけで奥深いのでそれに関しては機会があれば別の回にてまとめます。
今回、筆者らはGIAO NMRシフト値計算を行った後の立体構造の決定評価の指標パラメータとして新たにCP3パラメータを打ち出しました。
CP3はCP1,CP2に続く方法でして、Comparison Parameter 3の略です。

CP3法と他の方法との比較

この論文の中で筆者らは、これまでに報告されているパラメータを含めた

①MAE (Mean Absolute Error)
②CMAE (Corrected Mean Absolute Error)
③CP1
④CP2
⑤CP3
の5つの方法でNMRの計算値と実測値との間の誤差を評価し、NMRのシフト値計算による立体化学の決定方法について述べました。
それぞれのパラメータの違いについて述べます。
①MAE
(計算値ー実測値)の合計値÷N数

によって求める誤差の指標

②CMAE
(計算値ー切片の値)÷傾き=補正された計算値
という式を立て、グラフ化することにより補正された計算値を算出。
その後MAE同様の式、すなわち
(補正された計算値ー実測値)の合計値÷N数
によって誤差の指標を得る
③CP1
2つの構造(立体異性体)を考えます。
{(実測NMRシフト値の差)×(計算NMRシフト値の差)の総和}÷{(実測NMRシフト値の差)の2乗}
実験値の差に対して計算値の差が大きく勝った場合にはCP1の値が大きくなりその評価ができない欠点がありました。
④、⑤CP2, CP3
CP1の欠点を解決するべく、CP2およびCP3が開発されました。
CP3とCP2が異なる点は常に計算値と実験値が同じ符号であることに固執するかどうかの違い。
CP3は式内で絶対値を取らないためそこに厳密です。筆者は①~⑤を多くの化合物に適用し比較したところ、CP2やCP3が最も良い立体構造決定の指標となるパラメータであることを明らかにしました。

CP3法の欠点

ただ、ここでCPの欠点を先に述べておきます。

実測値の差を用いてその指標値を計算するため、全てのジアステレオマーを単離して自分がスペクトルを所持していないと予想ができないことです。

・・・

・・・

・・・

いやそれ致命的じゃね!?

まあ実際に単離してきたジアステレオマーのスペクトルを持っている場合には有用な方法であるとは言えそうですね。

単離したスペクトルを他に持たずに用いることができるDP4に関してはまた別の記事にて説明しますね。

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