学ぶの論文紹介

GoodmanのNMRシフト計算を用いた立体化学予測②

Assigning Stereochemistry to Single Diastereoisomers by GIAO NMR Calculation: The DP4 Probability
Steven G. Smith and Jonathan M. Goodman*
(2010年に報告された論文)
DOI:10.1021/ja105035r

前回に引き続きNMRシフト値計算を用いた立体化学決定についてです。
前回の記事ではCP3について簡単に解説しました。
今回はDP4についてです。

DP4の開発背景

前回の記事でも述べたようにCP3は複数の実測NMRシフトを得る必要があり、複数の不斉点を有する化合物にそれを適用することは困難を要します。
(major product : minor product = 95:5のような場合など)
この場合、どのように立体化学を予測すれば良いでしょうか。
そこで登場したのがDP4です。

DP4はGoodmanらが独自に構築したNMRのシフト値データベースを元に作ったパラメータです。
Goodmanらが計算を行ったものと実測値との差が小さくなるようなパラメータを開発しました。
これによりNMRスペクトルが実測スペクトル1つであったとしてもデータベースを利用するこ
とでその立体化学が合致しているかどうか判断できるようになりました。
ではその正確性はどうでしょうか。
正確性に関しての指標もベイズの定理に従ってその信憑性、確率の信頼率を算出しました。
そして、構造の決定したものの正答性とその確率との相関関係がもっともらしいと述べています。

DP4の利点・欠点

この方法の利点

  • これまで全てのジアステレオマーを合成しなければ予想すらできなかったところを、予想できそうなところまで来た(これはNMRシフト値自体の計算が発展したことにもよります)
  • 合成の論文で構造修正するときや合成完了して正しさをより推したいときのひとつの手段としてなら使えるかもしれないところまで来た

この方法の欠点ならびに今後期待されるところ

  • まだ全ての構造にそぐった結果を算出することができていないこと。
  • 計算する場合にはNMRのシフト値がカップリング定数に依存することからBrなどの元素が入ると計算できなくなること
  • マルチプレットやオーバーラップしたものを用いると算出が難しくなったり構造の誤決定に繋がりやすいこと。
  • 4級中心が連続するような化合物の場合用いることができるのが13Cのみとなり、また一般にデータベースにはそういった複雑な化合物が少ないため誤決定に繋がる可能性があること。
    (逆にここはそういった化合物に関するNMR予想などを出して頂くなどもありかもしれません。筆者がサンプル提供して共同研究申し込もうかな)
  • 多くの研究者が多用するにはまだまだ先になりそう

少しまとまりがなくなってしまいましたが、最近はDP4をAutomation化した?PyDP4なるものが存在するようでそちらに関しては原理そのものが更新されているなどではないようなので
ここでは割愛致します。ではまた。

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