さてお次の発表は合成系・医薬系分野です。
主に全合成・構造有機化学・医薬系合成に分類してグランプリをそれぞれ決定したいと思います。
全合成分野
これはなかなか面白い。鉄使った反応とかも全合成への応用例自体多くない気がするけど反応自体は古典的だし、戦略自体が鮮やか。あとで再読もする。#学ぶのメモ
Wolff/Cope Approach to the AB Ring of the Sesterterpenoid Variecolin https://t.co/BklE4X1XWg— 有機化学を学ぶ人 (@yuukiwomanabu) 2018年1月4日
鉄の反応ももちろんのこと、その他の反応でかなり多くの考察点があって面白かったので選定。
おおお、糖化学、核酸化学、全合成と全て詰まった非常に面白い論文!これこそ、僕が読むべき論文だ。#学ぶの学び #学ぶのメモ
Amipurimycin, total synthesis of the proposed structures and diastereoisomers https://t.co/7RgfuBmw1c— 有機化学を学ぶ人 (@yuukiwomanabu) 2018年1月24日
ツイート内容通り、糖化学だけでなく、核酸化学まで学べる全合成の論文でCommunicationながらしっかりと学べる内容なので選定。
これは素晴らしい発想に基づく研究。非対称化を思いついたところよりもその部分構造から非対称部を想定したところが鮮やか#学ぶの論文紹介
Synthesis of (±)‐Merrilactone A by Desymmetrization Strategy – Liu – – Chemistry – A European Journal – Wiley Online Library https://t.co/fTDkO9QDBd— 有機化学を学ぶ人 (@yuukiwomanabu) 2018年9月5日
合成自体はラセミ全合成ですが、途中で出てくるBINAPを不斉に変えれば不斉全合成可能であり、合成経路も非対称化の着眼点が非常に鮮やかだったので選定しました。
#学ぶの論文紹介
タイトルの割にはごりごりの全合成をしています。反応の種類や官能基変換も古典的なものが多く、卒研生向け。
Biomimetic Synthesis of (+)‐Aspergillin PZ – Reyes – – Angewandte Chemie International Edition – Wiley Online Library https://t.co/aRu4nMhWHD— 有機化学を学ぶ人 (@yuukiwomanabu) 2018年9月22日
こちらの論文はDirk Traunerによる論文です。
Biomimeticと言っている割には結構人工合成っぽい反応たくさん盛り込んでいます。
しかしこれがいいのです笑(←)
反応の種類が基礎的ながらバリエーションに長けており、またそのセグメント選びなども学べるので研究始めたての学部生向けに選定しました。
こちらが連報2報目。アルキンメタセシス別の部分での合成。#学ぶの論文紹介
Total Synthesis of Callyspongiolide, Part 2 The Ynoate Metathesis / cis‐Reduction Strategy – Fürstner – – Chemistry – A European Journal – Wiley Online Library https://t.co/WrrfiX4dh1— 有機化学を学ぶ人 (@yuukiwomanabu) 2018年11月7日
こちらの連報2報は素晴らしい合成でした。
他の人ができないよって言っている部分での連結を、「ほい、アルキンメタセシスならできるよ」って示していくのがFürstner先生のすごさ。
いい合成法なんだけど、いまいちそんなに非対称化しているように見えない。むしろ自然すぎてすごい笑#学ぶの論文紹介
A Desymmetrization‐Based Total Synthesis of Reserpine – Park – – Angewandte Chemie International Edition – Wiley Online Library https://t.co/VITHzASgxt— 有機化学を学ぶ人 (@yuukiwomanabu) 2018年11月9日
さてこちらも非対称化の論文です。これが学ぶの中では準グランプリですかね。
巻けないって?じゃあ俺たちが巻いたるわ!by Fürstner#学ぶの論文紹介
Metathesis at an Implausible Site: A Formal Total Synthesis of Rhizoxin D – Fürstner – – Angewandte Chemie International Edition – Wiley Online Library https://t.co/ALjHahQzfi— 有機化学を学ぶ人 (@yuukiwomanabu) 2018年11月16日
こちらもFürstner先生。もう巻けないものはないのか!?
Baran先生の新作。#学ぶの論文紹介
Concise Total Synthesis of Herqulines B and C https://t.co/EiGxsIlG11— 有機化学を学ぶ人 (@yuukiwomanabu) 2018年12月25日
John L Woodによる合成。#学ぶの論文紹介
Total Synthesis of Herquline B and C https://t.co/dptRzSIiwI— 有機化学を学ぶ人 (@yuukiwomanabu) 2018年12月29日
同時に2つのグループが報告しています。
お二方とも全合成の大家だけあって、まとめて学ぶといいですね。
そのうち記事にするかも!?
最後の2報は既にブログにて紹介済みの論文です。
#学ぶのブログ紹介用
Asymmetric Total Synthesis of Lancifodilactone G Acetate. 1. Diastereoselective Synthesis of CDEFGH Ring System https://t.co/yRljKqwbMH— 有機化学を学ぶ人 (@yuukiwomanabu) 2018年12月11日
#学ぶのブログ紹介用
Asymmetric Total Synthesis of Lancifodilactone G Acetate. 2. Final Phase and Completion of the Total Synthesis https://t.co/g9o0IBQ9jk— 有機化学を学ぶ人 (@yuukiwomanabu) 2018年12月24日
これら2つの論文の詳細については当ブログの記事
をご覧ください。
2018年全合成分野のグランプリ
さてでは2018年全合成分野のグランプリは何でしょうか?
もう大体いい論文出てきててもうある?って方もいらっしゃるじゃないでしょうか?
このタイミングであれが出てないでしょ!
ってお気づきの方、学ぶと気が合いますね笑
それでは発表します!
⋯
⋯
⋯
⋯
⋯
⋯
じゃじゃん!!こちらの論文!
最初のスケール感といい、骨格の複雑さといい、反応の選び方といい、文句なしの素晴らしい全合成です。#学ぶの論文紹介
Enantioselective Total Synthesis of (+)‐Plumisclerin A – Gao – 2018 – Angewandte Chemie International Edition – Wiley Online Library https://t.co/hBGkYzm7BY— 有機化学を学ぶ人 (@yuukiwomanabu) 2018年10月4日
こちらの論文をグランプリに選定したのはなんと言っても不斉全合成なのにもかかわらず、かなりのスケール感で合成を行っており、しかもそれが複雑な骨格を作り出すものであるという点です。
最初の反応は20グラム以上のスケールで、柴崎先生が開発されたランタノイド触媒存在下の不斉マイケル付加を用いています。
それ以外の反応の選択も素晴らしくみなさんにも見て頂きたいです。
こういった全合成を行いたい、と全合成を行う学ぶも思う次第です。
試薬・合成法分野
こちらの分野に関してはこれから使われていく、そういったことで評価されるべき分野だと判断しているので、この段階ではあえてグランプリを選びません!
けとんくんも紹介してたけど、これはなかなかいい合成法。#学ぶの論文紹介
Safer Synthesis of (Diacetoxyiodo)arenes Using Sodium Hypochlorite Pentahydrate https://t.co/LmnSykmTx9— 有機化学を学ぶ人 (@yuukiwomanabu) 2018年11月9日
これは非常に素晴らしいですね。
かといって作るのかと言われたら売ってるので買っちゃうかもですが笑
今後より安全かつ安価に作られて市販される価格が低下することを願います←
#学ぶのブログ紹介用
An Isolable and Bench-Stable Epoxidizing Reagent Based on Triazine: Triazox https://t.co/3yoxlnzBg9— 有機化学を学ぶ人 (@yuukiwomanabu) 2018年12月29日
ほかに忘れてはいけないのがこちらの試薬。
エポキシ化に安全な試薬を用いることができるという点は素晴らしいですね。
今後の使用例の増加に期待します。
構造有機化学分野
構造的に面白いのきたー!!!#学ぶの論文紹介
Fully Conjugated [4]Chrysaorene. Redox-Coupled Anion Binding in a Tetraradicaloid Macrocycle https://t.co/RaiJsvaoQS— 有機化学を学ぶ人 (@yuukiwomanabu) 2018年10月18日
[4]Chrysaoreneの穴の大きさを利用してヨウ素イオンを補足させた本論文。
個人的にこれを使って反応開発とかに発展できないものかと思いをはせてしまいました。
うぉおおー、綺麗な分子!!#学ぶの論文紹介
2,4,5,7,9,10-Hexaethynylpyrenes: Synthesis, Properties, and Self-Assembly https://t.co/M8349180A6— 有機化学を学ぶ人 (@yuukiwomanabu) 2018年11月21日
何で選んだかというと、綺麗だからです!それ以外に理由はいりません!!
(他にも自己組織化や物性についても調べてあって読み物としても面白いです)
分子面白いし、Scholl反応の違いとか見れるのも面白い。#学ぶの論文紹介
π-Extended Corannulene-Based Nanographenes: Selective Formation of Negative Curvature https://t.co/GOyRoaHLCX— 有機化学を学ぶ人 (@yuukiwomanabu) 2018年11月30日
こちらも構造的に面白いですが、酸化的芳香環化反応の試薬による選択性もなかなか見所ではないでしょうか。
こればっかりはやってみないとって意見もあるかと思いますが、傾向などは掴むことができるかもしれません。
2018年構造有機化学分野のグランプリ
なんじゃこれ面白すぎる。読まなきゃ。#学ぶのメモ https://t.co/ZI32Gc8HLu
— 有機化学を学ぶ人 (@yuukiwomanabu) 2018年3月22日
名大忍久保先生、廣戸先生。構造有機化学初心者の学ぶが見ても面白いと思える分子であったこと、そして物性など初学者が学ぶにもしっかりと書かれていて学べる論文だったというのが理由です。
構造の美しさはさることながら化合物の性質自体にも惹かれました。
実は学ぶが構造有機化学が好きになったきっかけは忍久保先生の有機合成化学協会誌の総説でした。
好きな先生の論文、みなさんに紹介しないわけにはいかないですよね?
医薬系分野
これは有機合成を行う人なら読んで損はない論文です。#学ぶの論文紹介
Route Optimization and Manufacture of Multihundred Grams of a Ghrelin Receptor Agonist https://t.co/bM1zbTrusr— 有機化学を学ぶ人 (@yuukiwomanabu) 2018年9月5日
AstraZeneca Gothenburg社のプロセス研究。
数百グラムの合成を見るのと同時に、初手からキログラムスケールで反応を行っているのでプロセスケミストリーが学べると思い選定。
帝人製薬のプロセス研究。読んでみよう。#学ぶの論文紹介
Process Development of Febuxostat Using Palladium- and Copper-Catalyzed C–H Arylation https://t.co/HLDPmqoVcU— 有機化学を学ぶ人 (@yuukiwomanabu) 2018年9月9日
帝人製薬によるFebuxostatのプロセス研究。
これまでの合成報告例に比べて工程数短縮、収率大幅向上に成功。
論文では20 g以上最終物を得ており、製薬会社のプロセス研究とアカデミア研究との違いなどを考えながら読むのによいかと思い選定。
#学ぶの論文紹介
ふむ、これは基質合成法も含めて学びたいところ。
Synthesis of Selective Estrogen Receptor Degrader GDC-0810 via Stereocontrolled Assembly of a Tetrasubstituted All-Carbon Olefin https://t.co/ZAqAyFtdn3— 有機化学を学ぶ人 (@yuukiwomanabu) 2018年9月21日
こちらはジェネンテックによるプロセス研究。
初手のステップはキログラムスケールであるゆえ、事細かにprocedureが書いてあります。
DMAを除くのにどうしているか気になりまるかと思いますが、濾別するなどの操作などで分離できるというプロセスでよくある手法まで学べると思ったので選定。
これ面白いなあ。UVにPhenylはもちろんだけど、MS追跡用にBrつけるのか。#学ぶの論文紹介
Neolymphostin A Is a Covalent Phosphoinositide 3-Kinase (PI3K)/Mammalian Target of Rapamycin (mTOR) Dual Inhibitor That Employs an Unusual Electrophilic Vinylogous Ester https://t.co/VxOWKOLRBg— 有機化学を学ぶ人 (@yuukiwomanabu) 2018年11月29日
こちらは合成というよりは分析と薬理って感じですが、MS追跡用に臭素入れておくとかそういった創薬のリード化合物探しの段階でも有用な点も学べるので選定。
このプロセス研究面白い!!#学ぶの論文紹介
Process Development of a Suzuki Reaction Used in the Manufacture of Lanabecestat https://t.co/UB3UOjwg0u— 有機化学を学ぶ人 (@yuukiwomanabu) 2018年11月29日
カップリングに際しての様々なパラメータを検討したテーブルが載っていて大きな学びとなったため選定。
kgスケールとは恐ろしい。学ばねば。#学ぶの論文紹介
Process Development for a Locally Acting SGLT1 Inhibitor, LX2761, Utilizing sp3–sp2 Suzuki Coupling of a Benzyl Carbonate https://t.co/ehRpW1wuAt— 有機化学を学ぶ人 (@yuukiwomanabu) 2018年12月25日
キログラムスケールながら、ばりばり遷移金属使っているだけあって、その辺のスケールアップについて一挙に学べると思い選定。
2018年医薬系分野のグランプリ
さて栄えある医薬系分野のグランプリに輝いたのは・・・・
#学ぶの論文紹介
キログラム…まじか……。しかもDavies触媒序盤で使ったり無茶苦茶かよ。
The First Kilogram Synthesis of Beclabuvir, an HCV NS5B Polymerase Inhibitor https://t.co/6XvE987hI6— 有機化学を学ぶ人 (@yuukiwomanabu) 2018年9月21日
ブリストル・マイヤーズ スクイブ社によるBeclabuvirのキログラム合成です。
最終物がキログラムってすごすぎです。。。。
圧倒的スケール感に驚かされるだけになってしまいそうですが、スケールアップにはそれ相応のことが必要になってきます。
しかしながらこの会社、序盤でDavies触媒使うとかごり押しかよ!ってくらいの合成戦略取っています。
しかしこういったごり押しに見えるところからもプロセス研究の工夫が見えてきます。
プロセス研究には必ずimpurityが生じる場合にその合成を行い、評価したり、混入していないことを確認したり、混ざらないためにはどうすれば良いか考えたりするんですね。
この論文はそういったところも学ぶことのできる素晴らしい論文です。
みなさんも是非ご覧あれ!
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- <2018年>学ぶの勝手に論文グランプリ(合成系・医薬系分野)
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カテゴリー:学ぶの勝手に論文グランプリ
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