選択的な加水分解の困難さ
皆さんは選択的な加水分解って行ったことありますでしょうか。
日本でも選択的な加水分解反応でエナンチオ選択的な反応を行っている研究室もありますよね。
(詳細はまた別の機会にでもしょうかいできればと思います。)
しかしながら、一般的な加水分解条件というのはかなり激しい塩基性条件が多く選択的に加水分解を行うことが難しいです。
選択的にエステルからカルボン酸へ変換する際の主な問題点
では選択的にエステルからカルボン酸へ変換する際に起こりうる主な問題点とは何でしょうか。
以下にまとめてみました。
- 官能基選択性(他の官能基が反応してしまう)
- エステルの化学選択性(別のエステルも反応してしまう)
- エステルα位の不斉純度の損失
おもにこんなものでしょうか。
Me3SnOH (trimethyltin hydroxyde)
K. C. Nicolaou先生が2005年にこれの解決策としてMe3SnOHを報告しました。
K. C. Nicolaou, A. A. Estrada, M. Zak, S. H. Lee, B. S. Safina, Angew. Chem. Int. Ed., 2005, 44, 1378–1382.
DOI: 10.1002/anie.200462207
早速ですが皆さんの気になる検討結果を見てみましょう。
一部のみ抜粋
K. C. Nicolaou, A. A. Estrada, M. Zak, S. H. Lee, B. S. Safina, Angew. Chem. Int. Ed., 2005, 44, 1378–1382.
DOI: 10.1002/anie.200462207
いかがでしょうか。
まなぶはこの文献を読んだ際、かなりの官能基・部分構造を耐えられるという印象を受けました。
ただ、メチルエステルを選択的に形式的加水分解するとはいえ、他の官能基との競合が少しは見られます。
これもむしろある程度競合が見られるからこそ信頼性があるといえます。
しかも、この反応性は綺麗に序列があるように思えます。
競合相手は主に次のよう。
- メチルエステル vs 他のエステル (概ねメチルエステル優先)
- 安息香酸メチルエステル vs ケイ皮酸メチルエステル (概ねケイ皮酸優先)
- 安息香酸メチルエステル vs フェノール性水酸基由来のアセチル基 (アセチル基優先)
- 鎖状カルボン酸メチルエステル vs 鎖状水酸基のアセチル基 (メチルエステル優先)
この反応は天然物にも比較的使われている印象があります。
欠点と言えば有毒なスズ試薬を化学量論量使うことでしょうか。
応用例
応用例自体はかなりの量があるので、適しているなと思ったもの、あまり響かなかったもので良い例があれば随時追加していこうと思います。