学ぶの論文紹介

Lancifodilactone G Acetateの合成研究(1)

学ぶの論文紹介タグつくりながら、お前1つ1つの論文の詳細全く紹介しないじゃないか!

と落胆されていた皆様、お待たせ致しました。
ようやく論文を紹介させて頂きます。

論文はこちら

紹介論文

Asymmetric Total Synthesis of Lancifodilactone G Acetate. 1. Diastereoselective Synthesis of CDEFGH Ring System
DOI: 10.1021/acs.joc.7b02915

合成標的

まず、先に述べておきますが、本論文は連報なので続きがあります。
その上で以降をご覧ください。

Lancifodilactone Gの全合成における合成上の難関を以下に挙げます。

  1. A,B環部の特異な縮環型ラクトン
  2. D環部に存在するエノール構造の構築タイミングと方法
  3. ラクトンを含むビススピロケタール構造

そこで筆者らは、Lancifodilactone Gの全合成に向けて、A環B環を除いたモデル化合物として上記のような化合物を設定しました。
1.はこれまでのZhen Yangの類縁体の全合成の経験から構築に困ることはないと考えると、2.と3.の解決が全合成達成に繋がると考え、行き着いたモデル化合物ではないかと思います。

合成検討1

筆者らは合成を行うにあたり、H環(γラクトン)を最後に構築することとしました。
また、FG環は筆者らが自ら発展させてきたPauson–Khand反応を用いることにしました。
まずは、CDE環の合成の見ておくべき反応をば。

C環は市販のシクロヘプタノンの7員環をそのまま用いました(日本ではTCIで25 mL 2,800 円<2018年12月12日時点>で購入可能)。数工程経てB環を構築、官能基化を施した後が大事な反応です。

グリニャール試薬を作用させて生成する[    ]内の化合物は平衡で存在しています。
これに第二世代Hoveyda–Grubbs触媒とTi(OiPr)4を作用させることで、系中でエピメリ化が進行しながらD環を構築することに成功しています。
厳密には一度環が開いた真ん中の化合物が閉環メタセシスにより閉環後アセタール化している機構も考えられ(むしろこっちではとまなぶは思ってます)、筆者の言うエピメリ化が正しいかどうかはわかりませんが、エピマー出発物と生成物から現象を見るとそういうこともできます。
この反応自体はGrubbsが1999年に報告した手法を参考にしています1)

Pauson–Khand反応の検討

次に筆者らは鍵反応であるPauson–Khand反応の検討を行いました。

反応条件の詳細
Entry 1: Co2(CO)8 (0.5 eq.) under CO
Entry 2: Co2(CO)8 (1.0 eq.), BuSMe (3.5 eq.)
Entry 3: Co2(CO)8 (1.0 eq.), CyNH2 (5.0 eq.)
Entry 4: Co2(CO)8 (1.0 eq.), TMANO (5.0 eq.)
Entry 5: Co2(CO)8 (1.0 eq.), TMANO (5.0 eq.), MS 4A
Entry 6: Co2(CO)8 (1.0 eq.), TMTU (3.0 eq.), under CO
Entry 7: CoBr2 (0.2 eq.), Zn (4.0 eq.), TMTU (1.2 eq.), MS 4A under CO
Entry 8: Co2(CO)8 (0.2 eq.), under CO
Entry 9: [Rh(CO)2Cl]2, under CO
Entry 10: under CO

みなさんとこの結果について議論できるように、副生物を与える機構も含めた反応機構を、学ぶなりに考えてみました。
まずは簡単のために目的物を与えるまでの反応機構を記します。

すでにネタバレになりかけていますが、分岐する中間体(I)と命名した中間体がこの反応の肝となっているのではないかと考えています。
次に学ぶの考えた、副生成物を与える機構を示します。

上記に示したように、一酸化炭素(CO)の挿入が起こらずに、β-水素脱離が進行したため副生成物を与えたと考えられます。
本反応においては、様々な添加剤を検討しています。
通常、Pauson–Khand反応では最初の一酸化炭素の脱離過程が進行しにくく、それを促進するために酸化剤を添加することで一酸化炭素を酸化的に除き、反応を速めます。
一方で今回の場合、上記β水素脱離との競合が考えられたため、挿入反応が優先するように配位子交換も狙って、様々な添加剤を検討し、TMTUが最適条件となったと考えられます。

このようにβ水素脱離との競合も副反応として考えられるPauson–Khand反応は複雑な天然物に応用可能であるものの、その分副反応を抑えるべく多くの検討を要することもPauson–Khand反応自体を開発しているZhen Yangの全合成から読み取れますね。

最終的な当量などの検討結果も一応お示ししておきます。

学ぶの考えとしては、コバルト錯体に対しての配位子の当量が多い方が、β水素脱離に対するCOの挿入反応の選択性がよく、そのため原料消失率に対して目的物の収率が高まったと思っています。

H環の構築検討

Pauson–Khand反応によってCDEFG環を構築できた筆者らは、最後にモデル化合物の次の難関、H環の構築に取り組みました。
H環の構築の難しさというよりも生成するビススピロケタール構造の安定性がわからないため、この構築が第二の難関となります(筆者が述べているわけではありません)。
γラクトン部の二重結合を飽和した基質(その他対応する反応にあった適切な基質)を用いて様々検討を行いましたが基本的には失敗に終わっています。
試みて失敗したルートを列挙します。

  • Ritter反応
  • Au触媒存在下の水和反応を用いた分子内環化
  • メタクリル酸エステルとビニル部位でのRCM
  • Reformatsky型反応

最終的に通ったルートはアクリル酸エステルを用いたRCMルートで、これまで保護基として用いていたBn基を途中で脱保護し、ケタール構造を構築してからRCMを行うルートでした。
(この際、当初EF環の核間位のメチル基がない基質で進めた基質から合成した化合物を用いているため、直接的には上記にお示ししたルートの化合物は登場しません。変換は可能だとは思いますが。。。)
以下にその経路をお示しします。

こちらのスキームの知見は後の本基質にも使われますのでご注目下さい。
また、もう一つの難関、エノール構造の構築には失敗に終わりました。
これについてはエノール構造が安定であるためには他のドライビングフォースが必要であると筆者らは述べています。
実際、エノール構造が安定でいるなんて考えがたいですものねえ。。。
(それが天然物でいるのが本当に謎なんですけど・・・・)

最後に皆さんここはだまされないで下さい。
筆者ら勝手に初期提示構造からメチル基抜いてますから!!残念!!
いや、入れて下さいよ、メチル基くらい。。。
さあ本基質のときに以上の新たに発生した問題点をどうするか、お楽しみに!

まとめ

Zhen YangらはLancifodilactone Gの合成に向けたモデル化合物を設定し、主骨格構築のためのPauson–Khand反応を詳細に検討し、目的とする骨格を与える条件を見出しました。
さらに、合成を進め、エノール構造前駆体の合成に成功しました。
しかし、エノール構造への変換は失敗に終わり、何か別の安定化要素がないと取れないのではないか、という知見が得られました。

参考文献

  1. M. SchollR. H. Grubbs, Tehtrahedron Lett.199940, 1425–1428.
    DOI: 10.1016/S0040-4039(98)02677-X

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