天然物分野に「卵が先か鶏が先か問題」を投げかける

2019年始まりました。
みなさまこれからもよろしくお願い致します。
2019年の抱負などはまた別記事にするとして、
本日は2018年のグランプリで紹介した論文について関わるお話を。

こちらの論文、グランプリに選ばせて頂いたのですが、その理由がもう一つ実はあったのです。
そこで書いてしまうと記事が長くなってしまうので今回こちらに分けました。
こういった合成難関化合物の少しだけ構造が異なる類縁体があとから単離されてくる、ということを考えますと構造薬理活性相関研究と銘打ちながらその類縁構造体の合成が先に行われるということもあっていいと思うのです。
ですから学ぶは全合成を行うものとして声を大にして言いたい!!
非天然(その時点では)類縁構造体の合成やSARのみを研究しているものに対しての

「それって天然物じゃないんでしょ?」
「天然物先に作った方が良いんじゃない?」

この質問はナンセンス(少し強めの言葉をあえて選んでいます)ではないかと!
自然の摂理を垣間見ているに過ぎない私たちが既に単離したり構造決定したりできているものが論文に出ているだけですので、それを単離できたこと自体がすごいと学ぶは思うのです。
ですから単離されて構造が決まっているものを作ったから完全構造決定、でなくても、既に作ってあった化合物が単離されたときに天然物でしたっていうお話があったって良いわけです。
できる限り多くの方がそういった考え方でいて欲しいなと学ぶは思います。
(一部の方が天然物分野の「新規性」という言葉や「天然物」という言葉を誤って認識していて本質が見えていないように思います。)

そんなの綺麗事だとか、いやいや何言っているんだナンセンスだという方がいてもいいとは思います。
しかし、学ぶの意見の全てを否定することはあってはいけないと主張します。
というのも、実例があるからです。
以下に実例を示します。
まず先に合成の論文を。

Enantioselective Total Synthesis of (+)-Eupenoxide and (+)-Phomoxide:  Revision of Structures and Assignment of Absolute Configuration
G. Mehta, S. Roy, Org. Lett.20046, 2389–2392.
DOI: 10.1021/ol0492288

そしてこちらが単離の論文。

Cytotoxic Alkylated Hydroquinone, Phenol, and Cyclohexenone Derivatives from Aspergillus violaceofuscus Gasperini
Y. Myobatake, K. Takemoto, S. Kamisuki, N. Inoue, A. Takasaki, T. Takeuchi, Y. Mizushina, F. Sugawara, J. Nat. Prod.201477, 1236–1240.
DOI: 10.1021/np401017g

これらの内容を今回の話題にフォーカスしてまとめると下のようになります。


2004年にG. MehtaらはEupenoxideの提唱構造体(3)を合成し、その構造が誤りであるということを明らかにしました。
このとき筆者らは、反応時に同時に生じたent-Eupenoxideのスペクトルが一致したことから新たな提唱構造としてあげました。
残念ながらエナンチオマーであったため、立体化学を含めた天然物の合成は達成することができませんでした。。。

 

 

ところがどっこいです!!

 

 

そのあと、筆者らが合成中間体として得ていた化合物(2)が12年後に天然物として報告されたのです。
しかも、単離者は既に合成されている合成品とのスペクトルの一致も確認、ならびに旋光性も一致したため、図らずも単離よりも先に全合成が達成されていたことがわかったのでした。
このように天然物があとから単離されて既に合成が達成されていることだってあるので、構造類縁体を網羅的に予め合成することでその全合成を先に行ってしまうことも目的にすることは可能なのです。
というのも、元より天然物の人工合成には主に3つの目的があると学ぶは考えているからです。

  1. 人工合成によって構造を確かとする
  2. 薬理成分の人工合成により、薬理評価効率の向上とリード化合物を生むこと
  3. 有機合成分野として作りにくい結合や骨格などを有しており、その化合物の合成に挑むこと自体が有機合成の発展に繋がること

1.の目的が2.であった場合はいかがでしょうか。
その場合は生合成から予測される未単離類縁構造を先に作ったって良いのです。
天然物分野において、生合成仮説はあくまで単離された化合物がきちんとつながり、かつ既に知られている、予想されている経路から考えた仮説にすぎないため、合成者が自ら考えても良いからです。
北海道大学の天然物の大家、小林淳一先生も以前仰っておられました。

少しテーマからぶれかけましたが次に学ぶはみなさんに投げかけます。

天然物の全合成テーマの設定に新しい提案

皆さん、天然物の全合成の標的化合物はどのようにお考えでしょうか?
その化合物を合成する目的は何でしょうか?
そもそも、天然物の合成研究を行う目的は何でしょうか?

学ぶは先に挙げた3つのうち、2.がもっとも大きな目的であります。
次に1.と3.です。面白い合成という点では3.を考えますが、これは合成自体の価値ではなく合成の深みの問題と思っております(独自性・オリジナリティー・創造力など色々言われますよね)。
では、2.を最大目的とするのであれば天然物として既に単離されている構造そのものでなくてもいいではないですか。
ここが違うだけですごく作りやすい!というなら、モデルとしてそちらを合成してその薬理評価をしてみてもいいと思います。
その際に生合成仮説を考え、派生パターンを自分で考えることができれば、将来的に単離されることがあるわけですから。
ということで学ぶからの新提案はこちら

「単離論文の構造を合成することに固執しすぎなくてもいいんじゃないの!?」

です。
けっして単離論文の構造を作る必要がないという意味ではありません。
単離論文が自然の摂理なのではなく、自然の摂理の一端を垣間見せることができたのが単離論文なのだから、それを必ず先に作るべきだみたいな考えがどうだろうという投げかけです。
ぜひみなさん活発なご意見を頂けたらと思います。

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