Tietze試薬
Tietze試薬は1982年にLutz.-F. Tietzeらによってその有用性が報告された試薬です。昇華精製可能な固体です。
別の研究者により試薬自体はそれよりも前に合成法が確立していますがTietzeらがこの試薬がDiels–Alder反応に有用な試薬であることを見出したことで、Tietze試薬と名前がつきました。
合成法
第一世代の合成法
最初に合成法を見出したのはZ. Arnoldでした。1960年にブロモ酢酸とDMF、POCl3と攪拌することでトリホルミルメタンが合成出来ることを報告しました。しかし、この方法は収率ならびに純度が低いという問題点がありました。
(Tietzeらの報告の時点ではまだそれ以降の合成法の報告がされていないため、Tietzeらはこの報告に従って実験を行っていたと推察します。)
第二世代の合成法
その後、Tietzeらの報告があり、この試薬の有用性について示されることとなり本試薬の効率的な合成法が求められました。
Tietzeらの報告から6年後の1988年にCalifornia大のF. Wudlらにより次の合成法が報告されました。WudlらはArnoldらの合成法の収率改善を目指し、カキのような改良ルートを見出しました。
M. Keshavarz-K., S. D. Cox, R. O. Angus, Jr., F. Wudl, Synthesis, 1988, 641–644.
DOI: 10.1055/s-1988-27664
なおこの文献で試薬の性質(エノール型をどの溶液で取っているかなど)についても詳しく調べられています。
(その後、Arnoldがこれに対しての反論に近い論文をこのあとすぐにArnoldらが出していますが合成法はWudlらの方法・塩が適しているということを述べています。)
Diels–Alder反応での有用性
Diels–Alder反応にエナールを用いてジヒドロピランを得る場合は、高温下(160~180 ℃程度)まで加熱しないと反応が進行しないことが知られていました。
一方でC2位にアクセプター部位を有する不飽和アルデヒドの場合、LUMOのエネルギーが大幅に変化し、室温下でも反応が進行すると言うことをTietzeらが報告していました。
そこで、Tietzeらはマロンジアルデヒドからさらに展開したトリホルミルメタンに着目しました。
すなわち、上記平衡が存在するトリホルミルメタンを用いると、右側の青い部分を用いてより簡単にhetero-Diels–Alder–Alder反応が実現出来ると考えたわけです。
Substrate Scope (一部省略)
L.-F. Tietze, K.-H. Gliisenkamp, K. Harms, G. Remberg, Tetrahedron Lett., 1982, 23, 1147–1150.
DOI: 10.1016/S0040-4039(00)87045-8
使用例
Stuart L. Schreiber, Amir H. Hoveydaらは自ら開発したフランとアルデヒドとのPaternò–Büchi反応の有用性を示すべく、Tietze試薬とのDiels–Alder反応を示した。
S. L. Schreiber, A. H. Hoveyda, H.-J. Wu, J. Am. Chem. Soc., 1983, 105, 660–661.
DOI: 10.1021/ja00341a077
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