学ぶの学び

Grieco酸化(Grieco Oxidation)

概要

Grieco酸化反応は1978年にPaul A. Griecoが開発した反応です。

Grieco_Oxydation1

反応のTIPS

情報が手に入り次第、追記。情報随時募集しています。

開発経緯

メチルアセタールなどの環状アルキルアセタールは一度ラクトールに変換した後、酸化する必要があった。Griecoらはこれをワンポットでラクトンへと導く方法を開発しました。

反応機構

Grieco_Oxydation2

ルイス酸による活性化と環状カルベニウムイオンを経由することが提唱されています。

反応のまなぶの解釈・疑問点

反応自体はかなり単純ながら合成経路の幅を広げる反応に感じました。

特に、OBzなどでも反応が進行すること、中間体のペルオキシドから塩基を用いても反応が進行することから、他の脱離基への応用も期待されます。
近年では脱離基自体が見直されてきていることから新しく脱離基として利用されているようなものがこの反応に用いられることもあるかも知れません。

反応が使用されている実例

1997年に金沢大学の向智里、花岡美代次らはAI-77Bの合成研究において本反応を用いて、鮮やかな変換を見せています。これにより合成した骨格のPh基は酸化的開裂によりカルボキシル基へと変換されているため、この反応を用いることはもとより想定されていたと考えられます。

Grieco-Oxn-Example3-2


C. Mukai, M. Miyakawa, M. Hanaoka, J. Am. Chem. Soc. Perkin. Trans. 11997, 913–917.
DOI: 10.1039/A605901E

また1997年にNational Tsing Hua UniversityのChin-Kang Shaらは(–)-Dendrobineの全合成の際にGrieco酸化を用い、彼らの場合は基質の反応性の低さゆえにペルオキサイドが得られました。これに塩基を作用させることで酸化を達成しています。

2019.12.10訂正:生成物になっていない誤りを発見したため訂正

Grieco-Oxn-Example6

C.-K. Sha, R.-T. Chiu, C.-F. Yang, N.-T. Yao, W.-H. Tseng, F.-L. Liao, S.-L. Wang, J. Am. Chem. Soc.1997119, 4130–4135.
DOI: 10.1021/ja9643432

 

1998年に東北大の小笠原國郎らは (–)-Mesembrine, (+)-SceletiumA-4 ならびに (+)-Tortuosamineの全合成の際、上野–Stork環化、続くGrieco酸化によりラクトン部位を構築しました。

Grieco-Oxn-Example1

O. Yamada, K. Ogasawara, Tetrahedron Lett., 199839, 7747–7750.
DOI: 10.1016/S0040-4039(98)01689-X

2000年にはUniversitat Rovira i VirgiliのIsabel Matheu, Sergio Castillónらが (+)-Avenaciolideおよび(+)-Isoavenaciolideの不斉形式合成の際に、双環性ラクトン部を構築するために用いています。Grieco酸化の代わりにJones酸化を用いた場合、収率が48%と低収率となることも特筆すべき点です。

Grieco-Oxn-Example4

E.Alcázar, M. Kassou, I. Matheu, S. Castillón, Eur. J. Org. Chem.2000, 2285–2289.
DOI: 10.1002/1099-0690(200006)2000:12<2285::AID-EJOC2285>3.0.CO;2-8

また2006年には東北大の井上将行(2019年時点東大)、佐藤隆章ら(2019年時点慶応大)、平間正博らが(–)-Merrilactone Aの不斉全合成の際に、上野–Stork環化、続くGrieco酸化によりラクトン部位を構築しました。

Grieco-Oxn-Example5

M. Inoue, T. Sato, M. Hirama, Angew. Chem. Int. Ed.200645, 4843–4848.
DOI: 10.1002/anie.200601358

さらに、2008年にはColorado大学のAndrew J. PhillipsらがHalichondrinの部分合成を行った際に、Achmatowicz反応で構築したベンゾイルアセタール部の酸化に用いました。

Grieco-Oxn-Example2


K. L. Jackson, J. A. Henderson, J. C. Morris, H. Moroyoshi, A. J. Phillips, Tetrahedron Lett.200849, 2939–2941.
DOI: 10.1016/j.tetlet.2008.03.018

元文献

P. A. Grieco, T. Oguri, Y. Yokoyama, Tetrahedron Lett., 1978, 419–420.
DOI: 10.1016/S0040-4039(01)91443-1

参考文献

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